収蔵品あれこれ

角型行灯(かくがたあんどん)

投稿日 2020年9月12日(土)

 

 郷倉の収蔵品【あかり】の器具として、角型行灯が2台あります。ほぼ同じ大きさ、重さですが、骨組みの意匠がちょっと違います。

 角行灯は、木製角型の骨に紙を貼り、中に燈心の入った油皿を置き、燈心に点火して明りとしたものです。燃料は、菜種油または毒荏(どくえ)の実の搾り油。

 片手に提げて持ち歩きのできるよう、提げ手がついており、高さは70~80㎝ほど。途中に油皿をのせる所を作り、油皿を置く下側に受け皿を重ねて、更に下の台の上に油や心かすを受ける行灯皿を置きます。点火や消燈、油をついだりする便利を図って、風よけの一方が上にスライドするように作られています。

 また、台の部分には引き出しがあって、中に付木(つけぎ)※が入っていました。

 ※付木は、火種を移す道具。(松材をハガキくらいの厚さに削り、幅2センチ、長さ13センチくらい、片方に硫黄を塗ってある。)
 以上、中川雄太郎(著)『村の民俗』より、「Ⅱ 人生ところどころ 22 あかり」から、引用抜粋させていただきました。

 

 行灯は骨組みがガタガタだったので、ボンドで補修。台の部分の取っ手は、本来ついていなかったのですが、引き出しやすいように新たに付け加えました。

 2台ある行灯のうち、一台の引き出しには付木が入っていて、もう一台の引き出しからは、昔の「一文銭」が出てきました。本来、油皿を置く台に、7WのLED電球をつけ、郷倉の照明器具として使い始めました。

 四方の風よけの紙は、ご近所のTさんがご自分で漉いた和紙(楮)を貼ってくださいました。(Tさん、ありがとうございました。)

 

 写真はクリックすると拡大します。



お歯黒(鉄漿)の道具

投稿日 2020年8月30日(日)

 郷倉と番屋にある収蔵品(450点ほど)には、全て通し番号が振られています。郷倉保存会の諸先輩がこつこつと作業してくださったお陰で、写真入りの立派な台帳が出来上がっております。

 そんな収蔵品の中には、名称や用途がわからないものもあります。その一つがこれでした。図1。通し番号-265、「真鍮の板」。松葉と笹、梅の枝が彫り込まれています。

 それが、やっとわかりました。地元の版画家・著述家である、故中川雄太郎氏のご著書に載っておりました。図2。

 以下に中川雄太郎(著)『村の民俗』より、「23 御歯黒」を転載させていただきます。

 

 ずっと昔の女は別として、江戸時代の女は、未婚の女と既婚者とをはっきり区別した。

 この既婚者は、髪は丸髷に結い、眉毛を剃りおとし、お歯黒をつけたので、すぐそれと知れたものである

 お歯黒は歯を染めることで、その染める材料を説明しよう。鉄漿と書く位いで、鉄片や古釘などを、茶の汁や酢の中に浸して酸化させた褐色の液とあるが、村では、釘などをびんに入れた水に浸して、使う時火にかけ、ふし(五倍子)を羽根楊子(はねようじ)につけ、この水をつけ歯に塗り、後で口をすすぐのだそうである。

 ふしというのは「五倍子」で、ヌルデの若芽や若葉に寄生する虫によって出来るコブから製した粉でタンニン材という。

 小さな袋に入れて、お嫁さんの絵など描いた一袋一銭五厘か二銭だった。羽根ようじは一本五厘、細い竹の管に鳥の羽を挿したものである。(中川しまさんの話)

 

 中川雄太郎氏のご著書により、郷倉にある鉄漿盥の用途もわかりました。図3

 なにせ、歯が十分に黒く染まるまで、鉄漿水と五倍子粉を繰り返し塗らねばならず、臭気もさりながら、タイヘン渋いので、頻繁に唾液を吐き、うがいをしなければならなかった。そのため、手元に盥とうがい用の茶碗を用意しておく必要があったようです。

 図はクリックすると拡大します。

 

図1

真鍮渡し金(しんちゅうわたしがね)松竹梅模様入り
真鍮渡し金(しんちゅうわたしがね)松竹梅模様入り

図2

中川雄太郎(著)『村の民俗』209頁より
中川雄太郎(著)『村の民俗』209頁より

図3

真鍮鉄漿盥(しんちゅうかねだらい)口径24㎝
真鍮鉄漿盥(しんちゅうかねだらい)口径24㎝